小児科|たけのここどもクリニック|さいたま市北区の小児科・アレルギー科

〒331-0812
埼玉県さいたま市北区宮原町3-173-7
048-668-7766
予約はこちらから
ヘッダー画像

小児科

小児科|たけのここどもクリニック|さいたま市北区の小児科・アレルギー科

小児科一般診療

発熱、咳、鼻水、のどの痛み、嘔吐、下痢、腹痛、湿疹、便秘、夜尿症など一般的なこどもの病気の診療を行います。こどもの病気のことならどんな些細なことでも遠慮なくお気軽にご相談ください。専門的な診療が必要と判断した場合には、適切な医療機関を速やかにご紹介させていただきます。
診療は予約を取られた方から順番に行いますが、呼吸が苦しい、けいれんしている、意識がない、生後3か月未満の発熱のような場合はすぐにスタッフにお伝えください。確認し必要性に応じて順番を前倒しして診察いたします。その際、お待ちの方には大変ご不便をおかけすることになりますが、どうぞご理解ください。

夜間や休日に医療機関を受診する必要があるかどうかの目安についてはこども医療でんわ相談の#8000または下の日本小児科学会が作成している「こどもの救急」をご参照ください。さいたま市の休日・夜間急患診療体制については下記の「☆さいたま市の休日・夜間救急診療のご案内」をご参照ください。

☆さいたま市の休日・夜間救急診療のご案内

診療内容

医学の進歩とともに以下の説明内容も変わっていく可能性があることをご容赦ください。

発熱

一般的に37.5℃以上の体温を発熱と考えます。お子さんが生後3か月を過ぎているならば、熱が高くても比較的機嫌がよく、食事・水分が取れている場合は急いで受診をしなくても大丈夫ですが、生後3か月未満の発熱は全く別対応となります。この年齢の発熱は重症なことが多く、基本的には入院して検査・治療が必要となるケースが多いため、夜間でも翌朝まで待たずに医療機関を受診してください。
発熱で受診される場合には、1日3回の体温記録表(院内に備え付けがあります)をつけて受診されることをお勧めいたします。熱型表により病気が現在どの段階にあるのか予測がつき、治療方針を立てるのに大変役に立ちます。ご面倒かと思いますが、ご協力をどうぞ宜しくお願いいたします。

けいれん

けいれんとは脳細胞が異常興奮した状態で、突然手足をガクガク震わせたり硬く突っ張ったりして、視線は合わず眼は上や横を向いてしまう状態となります。
けいれんが起きたら平らな場所に寝かせて、嘔吐したときに吐物が詰まらないように体を横向きにします。決して口の中にハンカチなどを入れてはいけません。時刻を確認し5分以内に自然に止まるけいれんについては、あわてずにけいれんが止まった後に自家用車での受診で大丈夫ですが、5分以上続くときは救急車を呼びましょう。
ただし、けいれんが起きた直後に5分以内に止まるけいれんなのかどうかは誰にも(医師でも)予測がつきません。特に初めてのけいれんならばけいれんがおきた時点で5分間待たずに即座に救急車を呼んでも構わないと思います(上記の「こどもの救急」のサイトの内容とは異なりますが)。このとき精神的に余裕があれば、動画を撮影しておくと診断に役に立ちます。
なお、解熱剤(熱冷まし)にはけいれんを予防するエビデンスは現在のところございません。

咳・鼻・のどの症状

咳、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み、胸のゼーゼーなどに対応します。咳が多くても水分や食事がとれていて、しっかりと睡眠がとれているならばすぐに受診しなくても大丈夫ですが、肋骨と肋骨の間がベコベコとへこんでしまうような呼吸の仕方(陥没呼吸といいます)であったり、バウバウと大型犬(あるいはオットセイ)が吠えるような咳(クループ症候群といいます)が止まらないときは、夜間でも受診が必要です。
他の病院でお薬を処方してもらっているのになかなかよくならない咳などの場合にもご相談下さい。なお当院にはレントゲン検査の機械はありませんのでご了承ください。

おなかの症状

嘔吐、下痢、腹痛などの症状に対応します。こどもの嘔吐・下痢症状の多くはウイルス性胃腸炎が原因で、特効薬はなく迅速検査を行う医学的意義にも乏しいため、嘔吐が1~2回で消失しその後しばらくしたら水分が取れるようになった場合にはいそいで受診をする必要はありませんが、繰り返し止まらない嘔吐の場合には比較的短時間で脱水症をきたすことがありますので、自宅で様子を見ずに医療機関への受診が必要です。
発熱があり強い腹痛と何度もトイレに行くような下痢がある場合には、食中毒などによる細菌性腸炎の可能性があるためご相談下さい。また、歩くとおなかに響くような比較的強い腹痛の場合も虫垂炎などの可能性があるため早めの受診が必要です。
おなかの症状により漢方薬が適切と思われる場合には積極的に使用しています。

皮膚の症状

皮膚の乾燥、乳児湿疹、あせも、とびひ、じんましん、アトピー性皮膚炎などこどもの皮膚の症状について幅広く対応しています。近年、環境の変化などによる原因から乾燥肌、乾燥性湿疹をきたしているこどもが大変増えています。これには新生児期からの正しいスキンケアの知識が重要ですので、具体的な詳しい方法については遠慮なくご相談ください。

じんましんは小児では比較的おこしやすい印象があり、原因は風邪などのウイルス感染によるものや温まったり冷えたり、汗などの刺激による一過性のことが多く、治療は抗ヒスタミン薬の内服が有効です。じんましんの7~8割ははっきりした原因が不明で、「食品の~~を食べると毎回じんましんが出る」「~~のお薬を飲むといつも体がかゆくなる」といったような出るタイミングにはっきりしたエピソードがある場合以外はアレルギー検査で原因が判明するじんましんは実際にはほとんどありません。”当てずっぽう”に血液検査を行ってもお子さんに痛い思いをさせてしまうだけであまり有用な情報を得られないことも多いのです。じんましんの原因がはっきりしないと不安になると思いますが、その点をどうかご理解いただけますようお願いいたします。

水いぼは小児によくみられるウイルスによる皮膚の感染症で、特別な治療を行わずに様子を見ていても半年から長くても1~2年くらいで自然になおります。摘除を希望される場合には皮膚科へのご相談をお願いしております。
やけどや切り傷などの外傷につきましては傷跡を残したり処置が必要となるケースが多いため、皮膚科や外科への受診をお勧めいたします。

便秘症

排便の回数には個人差があるため、毎日排便がなくても例えばいつも2日おきに通常の量が出ていて機嫌もよく、食欲もあり、腹痛もなく排便時にお尻が切れるなどの症状もない場合には特別な治療は必要ありません。ただし、腹痛やお尻の出血など排便による何らかのトラブルがある場合には、たとえ毎日排便があったとしても「便秘症」として治療の必要があります。
近年、食生活や運動不足などの生活環境の変化やストレスの増加などにより便秘の患者さんが成人も小児も大変増えています。便秘は治療開始が遅れれば遅れるほどおなかが便秘の状態に慣れてしまい頑固な便秘になってしまうため、治療期間に時間がかかるようになります。
便秘のお薬にはいろいろな種類があり、「飲み続けるとクセになる」というようなことのない安全性の高いお薬もございますので、お薬を飲んで毎日良い状態の排便があるということは決して悪いことではありません。お心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。

夜尿症

夜尿症の定義は、「5歳を過ぎても1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」とされています。患者さんの割合は7歳で10%程度あり、その多くは年齢とともに自然に治りますが10歳を超えても5%前後、中学生でも1~3%程度あり、まれながら成人になっても持続する例もあります。
生活指導をはじめとする治療により自然経過に比べて治癒率を2~3倍高めることができ、治癒までの期間が短縮するとされています。
当院では6歳までのお子さんに対しては基本的に生活指導のみで経過をみていきます。6歳を過ぎている場合にはまずは正しい生活改善の取り組み方を詳しくご説明し、生活指導のみで改善が乏しい場合には抗利尿ホルモン薬による内服治療や夜尿アラームによるアラーム療法を検討します。
夜尿症は放置をしておいても命にかかわるような病気ではありませんが、夜尿症のこどもは夜尿のないこどもと比較して自尊心が低くなる(自分に自信が持てない)との報告がございます。親御さんだけではなく本人も困っているなどの場合にも、是非ご相談ください。夜尿アラームは、装置のレンタル申し込みのご案内も取り扱っておりますのでお気軽にご相談ください。

【初回診察の問診】
初回診察の問診では以下のようなことをお聞きします。あらかじめ回答をご用意しておくと診察がスムーズに進みます。初回診察の後、早朝尿の検尿のご説明もいたします。 ①生まれてからずっと夜尿が続いていますか? それとも6か月以上夜尿のなかった期間はありましたか?
②日中におもらしをしてしまうことはありますか? あるいはゲームなどに熱中しているときにおしっこを我慢して体をもじもじさせてしまうようなことがありますか?
③夜尿の回数は1週間に何回程度ですか?
④ご両親やご兄弟に夜尿の既往歴のある方はいらっしゃいますか?
⑤すでにご家庭で水分制限などの生活習慣の改善に取り組んでいたり、他の医療機関で薬物治療などを受けた経験はありますか?
⑥いびきや睡眠時無呼吸の症状、尿路感染症の既往歴はありますか?
⑦毎日の排便の様子はどうですか? お子さんの便の回数や便のかたちについて質問いたします。

漢方薬

最近はこどもでも強いストレス下にさらされており、慢性的な腹痛や頭痛、だるさ、疲れやすさなどを訴えて相談される方も増えてきています。いわゆる西洋薬は、基本的に鎮痛剤ならば「痛みを止める」、制吐剤ならば「吐き気を止める」などの単一の作用に特化してる傾向があり、漠然とした幅広い症状には対応が難しく薬の種類ばかりが増えてしまうこともしばしば経験されます。そのような場合に複数の生薬から構成される漢方薬が意外なほど効果を発揮する場合がございます。
漢方薬は苦いといったイメージをお持ちの方も多いと思いますが、自分に合った漢方薬は意外なほどまずく感じません。身構えずに「まずは試しに飲んでみる」という気楽なスタンスでよろしいかと思いますので、興味を持たれた方はご相談ください。一緒に良い方法を考えていきましょう。

実施可能な検査と迅速検査

外注の検査会社と提携して行う検査

  • アレルギー抗体検査
  • ウイルス抗体検査
  • 細菌培養検査
  • 血液型検査(自費) など

何も症状のない方の「念のためのアレルギー抗体検査」は医学的な意味に乏しく保険適用もございませんので当院ではお勧めしておりません(例:今のところ特に何も症状はないけれど、親が甲殻類アレルギーなので心配なのでアレルギー検査をしてほしいなど)。

 

 

院内で行う検査

  • 迅速抗原検査(新型コロナウイルス、インフルエンザ、溶連菌、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、水ぼうそう)
  • 高感度迅速検査(インフルエンザ、マイコプラズマ)
  • プリックテスト
  • 血球CRP測定器による迅速血液検査
  • 血糖値測定
  • 尿検査など

近年、様々な迅速検査キットが開発されており、便利ですので検査をする機会が増えてきておりますが、迅速検査にはそれぞれ細かい保険上のルールが存在します。例えば、RSウイルスの検査は1歳未満の乳児しか保険適用ではありません。
医師の治療方針に関わらない検査、例えば本人は元気で特別な対応は必要ないけれど保育園から検査を要求された場合や単純に患者さん都合による検査希望の場合などでは保険が適用にならない場合や結果が子どもにとって逆にデメリットになる場合もございますのでご注意ください(それぞれの病気の細かい保険のルールと当院での考え方については以下の病気の解説文をご参照ください)。
なお、レントゲン検査、呼吸機能検査、超音波検査は当院では実施できません。また、当院のコロナ検査は抗原検査(現在PCR検査は実施しておりません)となります。

小児の注意すべき感染症

アデノウイルス

アデノウイルスはヒトのさまざまな臓器に感染して咽頭・扁桃炎、気管支炎・肺炎、結膜炎、胃腸炎、膀胱炎などを引き起こすウイルスで現在67以上の型が確認されており、ほとんどの子どもが10歳までに一度は感染するとされています。
アデノウイルスの型と感染する臓器には一定の関連があり、例えばプール熱などの気道感染や結膜炎は、1、2、3、4、5、7、21型、はやり眼は8、19、37型、胃腸炎は40、41型、出血性膀胱炎は11型のようにおおむね決まっておりますが、絶対的ではありません。
咽頭・扁桃炎(プール熱)では39℃~40℃近い高熱が4~5日間、長いと7日間も続き、はやり眼は結膜の強い充血と目やにが、胃腸炎は下痢、嘔吐、腹痛をきたします。迅速抗原検査キットで診断ができますが、特効薬はないため自分の免疫の力で治癒するしかありません。感染力は非常に強く咳・唾液・便などを介して感染し、しばしば保育園内・家族内で集団発生します。アルコールによる消毒効果は弱く、消毒には次亜塩素酸が有効です。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018)」によるとプール熱の登園のめやすは、「発熱、充血等の主な症状が消失した後2日を経過していること」です。この場合のカウントの仕方は熱が下がった日を0日目としてさらに翌日、翌々日お休みし、その次の日から登園が許可されるという意味です。

手足口病

手足口病は毎年夏ころに保育園児・幼稚園児を中心に流行する感染症で、口の中・手のひら・足のうら・おしり・膝・肘などに発疹のできるウイルス性の感染症です。9割以上は5歳以下の小児で占められていますが、小学生や稀に大人にも感染します。原因となるウイルスは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなど主に「夏かぜ」の原因となるウイルスで、「手足口病ウイルス」という特定の一つのウイルスがあるわけではありません。原因となるウイルスが数種類あり、また特効薬やワクチンもないため一度罹患してもまた何度も罹患する可能性があります。手足口病の原因ウイルスにはアルコールによる消毒効果はありません。
発熱については「熱はないかあっても微熱程度」と書かれていることが多いですが、症状はその年に流行するウイルスに影響されます。ここ最近の手足口病は「ある日突然38℃~39℃を超えるくらいの高熱がでて、その時点では特に手足に発疹もなく原因不明の発熱として様子をみる。2~3日くらいして解熱しそのころになって手足に発疹がでてきて手足口病と判明する」といったケースもあり、なかなか厄介です。
感染経路は、唾液や便などを介して感染します。厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン(2018)」によると、『日常的に手洗いの励行等の一般的な予防法を実施するとともに、回復後も飛沫や鼻汁からは1~2週間、便からは数週~数か月間ウイルスが排出されるのでおむつの排便処理の際には手袋をするなどの対応を行う。罹患した場合の登園のめやすは、「発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること」である。感染拡大を防止するために登園を控えることは有効性が低く、またウイルス排泄期間が長いことからも現実的ではない』となっております。 登園については各保育園・幼稚園の方針に従う必要がありますが、上記の通り登園については感染力がなくなったからではなくてあくまで本人の状態によるものなので、最低でもまる1日以上は平熱であることを確認し、口内炎も消えてごはんもしっかり食べられるようになるまで回復すれば、手足に多少発疹が残っていても登園は可能であることが多いです。

RSウイルス

RSウイルスは初めての感染の場合に悪化しやすいウイルスで、毎年冬になると大流行していましたがここ数年は夏でもみられるようになり、現在日本では1年中いつでも流行する状況となっております。重症化するのは主にこのウイルスに初めて感染する1歳未満(コロナの影響で最近では必ずしもこの法則に当てはまらない例もあります)なので、検査の保険適用が1歳未満のみとなっている点がインフルエンザやアデノウイルスとの違いです。
症状の典型例として、まず咳・鼻水などの上気道症状(いわゆる風邪)が2~3日続きます。そのまま風邪症状が数日続き治っていくケースが多いのですが、約3~4割のお子さんで4~5日目からウイルスが鼻・のどから下におりてきて気管支、さらにはその奥の細気管支まで到達してゼーゼーした呼吸が始まります。さらに悪化すると酸素の数値も低くなり酸素投与が必要となり入院になるケースもあります。
また、RSウイルスは生後1か月未満の新生児に感染すると無呼吸発作を引きおこします。これは胸部の聴診では異常のない咳・鼻汁だけのときでも生じうるなかなか厄介なもので、赤ちゃんにちょっと鼻水がでてきたなと思っていたら数日して突然呼吸しなくなり全身真っ黒になる状態を繰り返すので非常に怖い症状の一つでもあります。
従来では生後1歳までに日本人の約半数以上が感染し3歳までにはほぼ全員が感染し、終生免疫はできずその後は生涯にわたり繰り返し感染するウイルスでしたが、コロナの影響で1歳をすぎても感染を経験したことのないお子さんが増えており、そのような場合には3~4歳のお子さんでも高熱が持続したり肺炎を起こしたりして重症化することがあります。
大人にも感染しますが、すでに何度か感染したことがあるであろう年長の子や成人の場合はたいていが「しつこい風邪」程度で終わってしまいます。特効薬も特にないため、風邪症状のみで元気に走り回っているような場合は、押さえつけてまで鼻に綿棒を突っ込んで抗原検査をする意義はほとんどありません。もちろん、呼吸状態が悪化したお子さんや無呼吸発作を起こしやすい生後1か月未満の新生児などは、入院の必要性などを判断するために検査をおこなうことも考慮しています。
最後にRSウイルスのポイントをまとめます。 ①初めての感染では肺炎や細気管支炎をおこしたり、新生児に感染すると無呼吸発作を起こすこともあるため子どもの風邪ウイルスの中では比較的重症度が高い ②RSウイルスはいずれは全員かかり、しかも一生の間で何度もかかる。2度目以降の感染はたいていの場合は風邪でおわる ③ワクチンも特効薬もなく、全員が重症化するわけではないので診断をしてもしなくても元気な子ならば対応や処方する薬は変わらない(対症療法のみ)。また、早めに診断をしても重症化を防ぐ方法が確立されているわけではない ④登園のめやすについては、厚生労働省のガイドラインによると、「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」となっており明確に日数が決まっているわけではない。解熱しゼーゼーした呼吸がなくなり、咳が出なくなったら登園可能と思われる。 ⑤発症から1週間~10日間は感染性ウイルスを排出すると考えられている。 ⑥抗原迅速検査の保険は1歳未満しか適用ではなく、鼻の奥に綿棒を突っ込む検査は結構痛いので子どもにはストレスが高いと思われる
以上の点をふまえて、元気な子にやたらと不必要に検査を行うのではなく、お子さんの状態をしっかりと把握して正しく対応をすることが大事であると私は考えています。

ヒトメタニューモウイルス

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は略して「ヒトメタ」と呼ばれることもありますが、正しくはヒト・メタニューモウイルス(=human metapneumovirus)といい、存在自体は200年くらい前からあったみたいですが実際に発見されたのは2001年と最近で比較的新しいウイルスです。抗原キットによる検査が保険適用となったのも2014年とこちらもごく最近であるため、一般の人にはあまり耳馴染みのないウイルスかもしれません。
大人も含め全ての年齢の人に対して発熱・咳・鼻汁などの上気道炎や、細気管支炎・気管支炎・肺炎などの下気道炎を引き起こしますが、大部分の人は上気道炎、いわゆる風邪で終わります。しかし、初めて感染する乳幼児や高齢者などの免疫力の弱い人は重症化しやすく、重症の細気管支炎や肺炎を起こすこともめずらしくありません。残念ながら現在、特効薬もワクチンもありません。
毎年冬のRSウイルスの流行が終わったころの3~6月にかけて流行し、生後6か月頃から感染がはじまり2歳までに約半数の人が、5歳までに3/4の人が、遅くとも10歳までに全員が一度は感染するとされていますが、これもRSウイルスと同様にコロナの影響からか5~6歳ころになって初めて感染を経験し重症になるようなお子さんも比較的多くみかけるようになりました。
RSウイルスと同様に、一度の感染では終生免疫はできずに生涯にわたり繰り返し感染し、発熱の期間は比較的長く、平均で5日間くらい続きます。RSウイルスと同じような痰の多い「ゼーゼー」する呼吸となることが多いのですが、初感染の年齢がRSウイルスよりも少しだけ高いため、発熱が続いていて湿った咳をするゼーゼーする子を診察した時には、年齢が1~2歳程度までならまずRSウイルスを、それより年齢が少し上のお子さんならヒトメタニューモウイルスを私はまず第一に疑います。
ヒトメタニューモウイルスは、インフルエンザのように高熱が何日も持続する性質とRSウイルスのようにゼーゼーする呼吸になる性質の合わさったウイルスであると考えると分かりやすいかもしれません。
抗原キットにより診断が可能ですが、保険適用は「6歳未満の肺炎を疑う場合」となっています。前述の通り誰もが一度は感染するウイルスであり特効薬もないため、特に下気道炎を疑わせる症状のない元気な風邪症状のみのお子さんは、無理やり鼻に綿棒を入れて痛い検査をするメリットはあまりありません(そもそも肺炎を疑う所見のない人は保険適用外です)。
感染後ウイルスの排泄は1~2週間持続するとされていますが保育園の登園のめやすについては特に明確には決まっていません。RSウイルスと同じように「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」をめやすに考えて、解熱しゼーゼーした呼吸がなくなり咳がおさまったら登園可能と考えてよいと思われます。

突発性発疹

突発性発疹の原因となるウイルスはHHV-6とHHV-7の2種類あり、3歳~4歳ころまでにはほとんどすべての小児が感染を経験します。しかし、感染しても症状がでないで終わってしまう不顕性感染の割合が20~40%と高いため、「うちの子は突発性発疹に感染したことがない」という人の割合が多いのも特徴の一つであります(実際は感染してるのですが無症状で終わってしまったのです)。
一度感染すると唾液線に持続感染し、感染した人の唾液中にウイルスがちょろちょろと排泄され続けるため、唾液を通じて他の人に感染すると考えられています。父親や母親などの唾液が赤ちゃんの口に入り感染が成立するケースが多いのですが、保育園などですでに感染したことのある子のよだれを通じて感染するケースもあります。親の唾液から感染するルートがあるので、保育園など集団生活をしてない子やまだ人ごみに出たりしたことのない子でも感染する可能性があり、生後初めての発熱の原因となることが多いところがポイントです。
症状の典型的なケースをしめします。「今まで熱を出したことのない生後10か月前後の赤ちゃんが、ある日突然39℃~40℃ちかい高熱がでる。熱のほかは少し便がゆるい程度で機嫌もよく母乳もよく飲んでいる。解熱剤を飲ませても熱は少ししか下がらず39℃以上の高熱がまる4日間続く。いよいよ心配になってきたころに突然熱がさがり、解熱した半日後に胸・おなか・背中・顔面など上半身を中心に赤い発疹が出てくる。とくにかゆがっている様子もないのだが、発疹がでてきた前後からものすごい不機嫌になる。発疹は3日間くらいで消えてようやくもとの機嫌にもどる」。大まかにいうとだいたいこのような感じのイメージを持つとよいかと思います。
突発性発疹には特効薬やワクチンはなく、処方する薬は解熱剤(熱冷まし)程度しかありません。そして解熱剤を飲んだからといって一時的に熱は下がりますが、病気が治るわけではありません。 突発性発疹は熱性けいれんを引き起こすことがしばしばあり、時にけいれん重積といってけいれんが長い時間続いて入院となってしまうケースも珍しくありません。稀にですが後遺症を残すような脳炎や脳症を起こすこともあり、ありふれた感染症ですが決して軽い病気ではないと思います。熱が下がってから脳炎・脳症、肝炎・心筋炎などを発症することもあり、熱が下がったからといって完全には安心できないところも注意が必要です。

ノロウイルス

ノロウイルスは乳幼児から成人まで幅広く感染する胃腸炎ウイルスで、1年中発生していますが特に毎年11月から翌年5月ころまで流行し、12月~1月が発生のピークとなっております。潜伏期間は24~48時間と比較的短く、症状は嘔吐の症状が強いのが特徴で、あまり高熱は出ないことが多いです。
遺伝子のタイプが少しずつ異なる様々な種類が存在するため、一度感染しても終生免疫はできずに生涯にわたり繰り返し感染します。
症状が重症になると脱水症状をきたしますが、1~2歳の幼児では「胃腸炎関連けいれん」という熱が無いのに短時間にけいれんを連発するような症状をおこすことがあるため注意が必要です。この胃腸炎関連けいれんは、熱性けいれんで用いられるジアゼパム座薬(ダイアップ)が効果がないところも厄介な点です。
ノロウイルスの感染力は非常に強く、患者の便や嘔吐物に含まれるウイルスが口に入り感染する経路や、床などに残った嘔吐物が乾燥して空気中に漂い鼻や口に入ることにより感染する空気感染の経路があります。また、汚染されたカキなどの二枚貝を充分に加熱しないで食べることにより感染することもあります。
汚物の処理は一般的に希釈した次亜塩素酸ナトリウムが用いられますが、熱には比較的弱く85℃・1分間以上の加熱で死滅します。一方、アルコールに対する効果は不十分であるとされています。
ノロウイルスには特効薬もないため、通常は臨床症状や周囲の感染状況からウイルスを推定して診療がなされている場合が多いですが、便中のウイルスを検出する検査キットもございます。ただしノロウイルスの検査キットは3歳未満と65歳以上しか保険適用はなく、特効薬があるわけでもないため例え陽性と判明しても基本的にはその他のウイルス性胃腸炎の時と全く同様に下痢・嘔吐がなくなるまで自宅安静とこまめな水分補給、消化に良い食事を心がけるといった対応となりますので、実際に検査が診療に有用なケースは多くありません

新型コロナウイルス

ヒトに感染するコロナウイルスは風邪症状を引き起こすウイルスとしてもともと4種類知られており、その後2002年に発見されたSARS-CoVが5番目、2012年に発見されたMERS-CoVが6番目、そして2019年中国武漢市で発見されたSARS-CoV-2(いわゆる新型コロナウイルス)が7番目のコロナウイルスとなります。日本でも小児の感染者数は増えておりますが、高齢者と比較すると重症例の報告はそれほど多くありません。ただし、オミクロン株の流行により小児への感染者数が急増し、小児でも重症例、死亡例の報告がされるようになってきました。
小児の新型コロナウイルス感染症の症状としては発熱、頭痛、喉の痛み、乾いた咳が多く、症状だけでは普通の風邪と区別をつけるのは難しいです。成人例でよく知られている味覚・嗅覚障害は小児、特に10歳未満ではほとんどありません。イメージとしては、ある日突然38℃以上の高熱がでて翌日受診、検査したら陽性と判定され何もしなくても翌々日には解熱してしばらく咳はでますが数日で元気になる、といったケースが多いです。嘔吐・腹痛を訴えるケースもあり、おなかの症状に加えて発熱も伴う場合には、ウイルス性胃腸炎ではなくコロナ感染の可能性もあるため充分に注意が必要です。もともと免疫が弱いお子さんや肥満などの基礎疾患を持つお子さんに重症化する例が報告されておりましたが、前述の通りオミクロン株の流行により小児でも重症例が報告されるようになってきました。
小児の新型コロナウイルス感染症後の患者さんの一部にMIS-C(小児多系統炎症性症候群)という合併症を起こすことも知っておかなければなりません。MIS-Cは8歳前後の小児に最も多く、コロナ感染後2~6週間経ってから発熱(ほぼ必発)・胃腸症状(腹痛、嘔吐、下痢)・循環器症状(血圧低下、不整脈、ショックなど)・発疹・眼球結膜充血など川崎病に似た症状を引き起こします。コロナ感染後1か月くらいして原因不明の発熱を伴う腹痛などの症状が出た場合には充分に注意が必要です。

溶連菌感染症

溶連菌感染症は、正しくはA群溶血性連鎖球菌といい略して「溶連菌」と呼ばれ、小児に咽頭炎やとびひなどを引き起こす日常的によくみられる細菌感染症です。症状は2~5日の潜伏期間のののちに発熱強いのどの痛みの症状が出てきて、そのほかしばしば腹痛、嘔気・嘔吐などのおなかの症状をきたすため「胃腸炎」と間違われることもあります。また、発熱後1~2日程度たってから全身に細かい点状の発疹がみられることもあります。治癒しても終生免疫ができるわけではないので何度もかかることがあり、とくに兄弟間などで感染が行ったり来たりする「ピンポン感染」と言われる状態になることもあります。感染経路は咳やくしゃみによる飛沫感染と細菌が付着した手やタオルなどを介しての接触感染であり、マスクによる飛沫防止と手洗いは感染予防に有効であると考えます。
溶連菌の合併症にリウマチ熱(心臓に炎症をおこす病気)や急性糸球体腎炎などがあり、これらを予防するために適切な抗生剤をきちんと決められた日数分内服する必要があります。抗生剤を内服すれば翌日には解熱し、内服開始後24時間以上経過すれば感染力はなくなり登園・登校も可能となります。リウマチ熱も急性糸球体腎炎もどちらも5歳~15歳くらいの小学生くらいの年齢の子に多い病気で3歳未満の小児ではほとんど起きません
3歳以下の小児や成人に感染した場合は典型的な症状をきたさないことも多く、特に3歳未満では鼻水などの風邪症状のみで終わってしまったり、全くの無症状のこともあります。ただこの年齢ではリウマチ熱や腎炎を起こすこともないためそもそも過剰に心配する必要もありません。この年齢では知らないうちに感染して知らないうちに治っていたとしてもそれはそれで気にすることはないのです。
もう一つ、この菌のややこしいところに「健康保菌者の存在」があります。溶連菌は普通の元気な子供の約10~20%くらいになんの症状もなくただひっそりと咽の奥に住んでいる「健康保菌者」がいることが分かっており、このような子どもから感染することは無いと考えられており本人も無症状で合併症を起こすこともないため特に治療の必要もありません。
健康保菌者に検査を行うとやはり「陽性」と判定されてしまうため、無症状の子どもや感染の可能性が高くなさそうな子どもまでやたらと検査を行うと本来治療の必要のない子まで登園を休ませて抗生剤を10日間内服させなければならないことになってしまいます。そのため溶連菌の検査を行う際には、しっかりと診察を行い検査が必要か慎重に判断する必要があります。「流行しているので保育園から検査をするように言われた」等の理由だけで何も考えなく検査を行うと、結果が子どもにとってデメリットになることもあるのです。